不動産クラウドファンディングのマスターリースは、物件を一括で借り上げる相手から賃料を受け取る仕組みです。
空室の影響を平準化しやすい一方、リスクが消えるわけではなく、マスターリース先の支払能力や契約条件へ置き換わります。
代表的な6つのケースに分け、契約成立前書面でどこを見るかまで分かる形にまとめます。
※本記事にはPRを含む場合があります。
投資は元本保証ではありません。
最終判断では各案件の契約成立前書面・重要事項説明・運用方針を確認してください。
この記事でわかること
・結論|マスターリースは空室リスクを相手先の信用リスクへ置き換える
・マスターリースとは|サブリースとの違い
・固定賃料型とパススルー型
・投資前に確認する7項目
・6つのケース別注意点
・全案件に共通する判断軸
・よくある質問
・まとめ
・出典・参考
・利回りカレンダー|投資情報の自動収集ツール
結論|マスターリースは空室リスクを相手先の信用リスクへ置き換える
ポイント
・空室の影響を平準化しやすい
・賃料の支払いは相手先の信用力に依存する
・賃料の減額・契約解除条件を確認する
・出口の売却リスクは別に残る
マスターリースがあるだけで安全とは判断できません。
投資家が受け取る分配金の手前にマスターリース先が入ることで、入居率が毎月変動する影響は抑えやすくなります。
しかし、相手先が賃料を払えない、賃料が見直される、契約が終了する場合には分配へ影響します。
さらに、運用終了時の元本償還が物件売却に依存する案件では、マスターリースがあっても売却価格の下落や売却延期は防げません。
| 見る対象 | 投資家の読み方 |
|---|---|
| 運用中の分配 | 誰が、どの契約に基づいて、いくら払うのかを見る |
| マスターリース先 | 外部企業かグループ会社か、支払能力を確認する |
| 実際の物件収益 | 入居率・賃料・ホテル売上など、最終需要を確認する |
| 運用終了時の元本 | 外部売却・自社買取・再組成など、出口を別に見る |
マスターリースとは|サブリースとの違い

マスターリースは、所有者やファンドが保有する物件を、事業者が転貸する目的で一括して借りる契約です。
その借り手が入居者やテナントへ貸す契約をサブリースと呼びます。
国土交通省も、所有者とサブリース業者の契約をマスターリース、サブリース業者と入居者の契約をサブリースとして区別しています。
不動産クラファンでは、ファンドがマスターリース先から賃料を受け取り、その収益の一部を投資家へ分配する構造があります。
| 契約 | 当事者と役割 |
|---|---|
| マスターリース | 物件所有者・ファンド → 一括借上げ会社 |
| サブリース | 一括借上げ会社 → 入居者・テナント |
| 投資家との契約 | クラファン事業者・営業者 → 投資家。匿名組合契約など |
【補足】
国土交通省のサブリース規制・注意喚起は主に賃貸住宅の所有者向けです。
用途、契約当事者、グループ関係によって法的な扱いは異なるため、個別ファンドでは契約成立前書面の内容を優先して確認します。
固定賃料型とパススルー型|「一括借上げ」でも中身は違う

ポイント
・固定賃料型は入居率の影響を平準化しやすい
・パススルー型は実際の賃料収入が反映されやすい
・保証という言葉より賃料算定式を見る
マスターリースには、契約で定めた賃料を受け取る固定賃料型と、実際の入居状況や収入に連動するパススルー型があります。
「マスターリースあり」だけでは、空室時にも同じ賃料が入るかは判断できません。
固定賃料型でも、契約更新、賃料改定、免責期間、途中解約の条件が設定されることがあります。
国土交通省と消費者庁も、家賃保証をうたう契約であっても賃料減額や契約解除が起こり得ると注意喚起しています。
| 方式 | 確認すること |
|---|---|
| 固定賃料型 | 固定額・固定期間・賃料改定・免責・解約条件 |
| パススルー型 | 実際の入居率・回収賃料・控除費用・最低保証の有無 |
| 売上連動型 | ホテル売上などの算定式・最低賃料・運営費負担 |
マスターリース案件で投資前に確認する7項目
ポイント
・相手先を確認する
・賃料算定式を確認する
・減額・解除条件を確認する
・実際の物件収益と出口を確認する
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 1. 契約相手 | 外部企業かグループ会社か。正式な会社名も確認する |
| 2. 賃料の決まり方 | 固定・パススルー・売上連動のどれか |
| 3. 契約期間 | ファンド運用期間を十分にカバーしているか |
| 4. 減額・解約 | 見直し時期、解除事由、免責期間があるか |
| 5. 相手先の信用 | 財務、事業実績、保証・敷金などの補完があるか |
| 6. 最終需要 | 実際の入居率、賃料水準、売上が契約賃料を支えられるか |
| 7. 出口 | 外部売却、自社買取、再組成のどれを想定するか |
案件ページだけで分からない場合は、契約成立前書面の確認ポイントも参照してください。
相手先名や賃料算定式が開示されていなければ、事業者へ問い合わせ、回答を投資判断に含めます。
マスターリースを使う6つのケース|ケース別に注意点を整理
ここからは、マスターリースを使う代表的な6つのケースを整理します。
同じマスターリースでも、誰が払うか、何を原資に払うか、元本をどう返すかでリスクは変わります。
僕が特に見ているのは、契約書上の賃料支払者だけではなく、その会社が最終的にどこから現金を得ているかです。
ケース1|外部企業とのマスターリース

ポイント
・外部企業の信用力を見る
・賃料の差額は空室リスクを負う対価
・賃料改定と解約条件を見る
・物件賃料との乖離を見る
【仕組み】
クラファン事業者と資本関係のない企業が物件を借り上げ、入居者やテナントへ転貸する形です。
外部企業が固定賃料を払う契約なら、運用中の空室変動を平準化しやすくなります。一方、転貸先から受け取る賃料とファンドへ払う賃料の差額は、マスターリース先が空室・滞納・運営のリスクを負う対価です。そのため、物件が満室のときに得られる賃料をファンドがすべて受け取る構造とは限りません。
【注意点】
外部企業との契約でも、固定賃料が運用終了まで必ず続くわけではありません。契約更新、賃料改定、免責期間、中途解約の条件によっては分配原資が変わります。
また、外部企業だからといって安全なわけではなく、支払いが止まれば新しい借主を探す期間の無賃料や、代替契約の賃料低下が生じる可能性があります。
【確認したいポイント】
周辺賃料に比べて契約賃料が無理のない水準か、契約期間がファンド運用期間をカバーしているか、相手先が支払い続けられるかを確認します。
相手先の会社名、事業内容、財務、契約類型、敷金や保証の有無まで開示されていれば、空室リスクをどの程度移せているかをより具体的に判断できます。
ケース2|グループ会社とのマスターリース

ポイント
・関連当事者取引として読む
・実際の賃料収入と空室を確認する
・売却時は市場賃料で評価する
・グループ全体の財務負担を見る
【仕組み】
クラファン事業者のグループ会社がマスターリース先になる形です。グループ内で運営方針を揃えやすく、入居率が一時的に下がってもファンドへの賃料を平準化しやすい利点があります。
一方で、グループ会社からファンドへ支払われた賃料は、グループ全体で見れば外部からの現金流入とは限りません。最終的には、入居者やテナントの賃料、またはグループの他事業が支払いを支えます。
【注意点】
契約賃料が市場水準で決まっているか、実際の入居者賃料がどの程度あるかは、外部企業との契約より見えにくくなることがあります。
グループ会社からの支払いで分配が安定していても、物件自体の収益力が高いとは限りません。
将来の買い手は、グループ内で設定された賃料だけではなく、実際の空室、市場賃料、契約の継続性を見て物件を評価します。マスターリース賃料と実収入の差が大きいほど、売却時の評価とファンド上の想定に差が出る可能性があります。
【確認したいポイント】
住宅なら物件名で募集賃料や空室を調べ、契約賃料と実際の賃料収入が著しく離れていないかを見ます。ホテルや商業施設など外部から確認しにくい物件では、稼働実績や賃料算定の根拠を事業者へ問い合わせます。
同じグループ会社が複数ファンドのマスターリース先になっている場合は、案件数を分けても支払者の信用リスクは共通する点にも注意が必要です。
ケース3|賃料だけでは分配を賄えず、売却益も必要な案件

ポイント
・賃料収入と分配額を比べる
・不足分を誰が負担するか見る
・売却益が必要な構造を把握する
・延長時の負担を見る
【仕組み】
表面上はマスターリース賃料から分配する案件でも、契約賃料や分配額が実際の物件収益を上回れば、その差額はグループ資金や将来の売却益で補う必要があります。
インカム型と表示されていても、物件が生む賃料だけではファンド全体が成立せず、実質的に売却益も必要とするケースです。
【単純化した例】
物件が生む年間の実収益が400万円で、マスターリース賃料としてファンドへ600万円が支払われるなら、年間200万円の差額が生じます。
その200万円をマスターリース先の他事業の利益で負担するのか、将来の売却益で回収するのかによって、投資家が実質的に負うリスクは変わります。
※構造を説明するための仮定例です。
【注意点】
運用中に予定どおり分配されていても、物件収益だけで分配を生み出せているとは限りません。売却価格が想定を下回る、または売却期間が延びれば、不足分を負担する期間も長くなります。
同じグループが類似構造の案件を複数運用していると、一つひとつの差額が小さくても、グループ全体では負担が積み上がる可能性があります。
【確認したいポイント】
取得価格、実際の賃料収入、管理費や修繕費を引いた後の収益、マスターリース賃料、予定分配額を並べます。そのうえで、売却益が出ない場合にも運用中の分配と元本返還を無理なく行えるかを見ます。
不足分の負担者や賃料算定の根拠が開示されていない場合は、事業者の回答を確認してから投資判断をします。
ケース4|売却益型ファンドの運用中にマスターリースを使う案件

ポイント
・元本償還は売却に依存する
・運用中の分配と案件の成功を分ける
・取得価格と売却条件を見る
・自社買取・再組成の資金源を見る
【仕組み】
売却益を主な目的とする案件で、運用中の分配原資としてマスターリース賃料を使う形です。ケース3との違いは、売却益が主な収益源であることを案件の前提として説明し、運用中の分配だけをマスターリース賃料で補う点です。
この使い方自体は投資家に運用中の収益を還元する仕組みですが、ファンドの成否はあくまで売却で決まります。
【注意点】
運用中に予定どおり分配されていることと、出口の売却が順調であることは別の話です。
分配実績があるからといって、売却価格や元本償還まで確定したわけではありません。
売却を急ぐと価格を下げる必要がある一方、延長すればマスターリース先の賃料負担やファンドの管理費用が続くため、「いくらで、いつまでに売れるか」が中心になります。
【確認したいポイント】
取得価格、鑑定評価額、想定売却価格、売却先候補、売却期限、価格が下落した場合の元本毀損ラインを見ます。予定利回りが高いかより、保守的な売却価格でも元本と分配をまかなえるかが重要です。
自社買取や再組成を出口にする場合は、それ自体を否定するのではなく、買取主体の現預金、借入余力、次の募集に依存しない資金源があるかを確認します。
ケース5|ホテル・リゾート案件

ポイント
・ホテル運営実績を見る
・運営費を引いた後に固定賃料を払えるか見る
・特殊用途として出口を考える
・類似案件への集中を確認する
【仕組み】
ホテルやリゾートの運営会社が施設を借り上げ、ファンドへ固定賃料または売上に連動する賃料を払う形です。マスターリースを入れることで、季節ごとの客室稼働率の変化が、すぐに投資家の分配額へ反映されにくくなります。
ただし、固定賃料の原資はあくまでホテル事業が生む現金です。契約書上の賃料が固定でも、宿泊需要が落ち込み、運営会社が支払い続けられなければ安定性は維持できません。
【注意点】
ホテルは、宿泊需要、客室単価、稼働率、季節性によって売上が大きく動きます。また、人件費、水道光熱費、予約サイト手数料、清掃費、備品の更新費用などが必要です。
売上があるかではなく、これらの運営費を引いた後にマスターリース賃料を払えるかを見る必要があります。
さらに、ホテルは立地と運営力に価値が大きく左右されるため、需要が落ちたときは住宅より買い手が限られる可能性があります。
【確認したいポイント】
運営会社の運営年数と施設数、稼働率、客室単価、売上の推移に加え、運営費を引いた後の収益で固定賃料をどの程度カバーできるかを確認します。稼働実績が非開示なら、想定値の根拠を事業者へ確認するのも一案です。
出口は外部売却か、自社買取か、再組成かを分けて見ます。同じ運営グループのホテル案件が複数ある場合は、投資先の物件が分かれていても、宿泊需要と運営会社の信用リスクは共通することがあります。
ケース6|開発型ファンド

ポイント
・完成前のリスクは残る
・賃料の発生開始条件を見る
・追加工事費を誰が負担するか見る
・完成後の需要と出口を確認する
【仕組み】
ファンドで土地の取得や建物の開発を行い、完成後にグループ会社などが物件を借り上げる形です。完成後の賃料収入は平準化しやすくなりますが、工事中の価値と完成後の価値は分けて考える必要があります。
マスターリース契約が予定されていても、通常は契約で定めた完成・引渡しなどの条件を満たすまで賃料は発生しません。
【注意点】
マスターリースは、工事遅延、建築費の上昇、許認可、施工会社の履行、完成前の毀損などの開発リスクを減らす仕組みではありません。
工期が延びれば賃料の発生も遅れる可能性があり、予定分配の原資、運用期間、売却時期のすべてに影響します。資材費や人件費が上がったとき、追加費用を営業者、建設会社、マスターリース先の誰が負担するかも重要です。
【確認したいポイント】
工事進捗、建築確認や許認可の取得状況、追加費用の負担者、マスターリース賃料の発生開始日と開始条件を見ます。完成が遅れた場合に、分配と運用終了日がどうなるかも契約書面で確認します。
完成後は、一括借上げの予定があるかではなく、その賃料を支える入居者やテナントの需要があるかを見ます。外部売却、自社買取、再組成のどれを出口にするかと、同種の開発案件が同じグループに集中していないかも併せて確認します。
全案件に共通する判断軸|マスターリースの先にある現金を見る
ポイント
・分配原資の最終的な出どころを見る
・マスターリースなしでも物件需要があるかを見る
・元本を返す出口を別に見る
・同一グループへの集中を確認する
全ケースに共通する重要な視点は、「マスターリースを外しても案件が成立するか」を考えることです。
契約上はマスターリース先が賃料を払っていても、その会社の現金は入居者賃料、ホテル売上、グループ資金などから生まれます。
この最終的な現金源が弱ければ、固定賃料は長期的には続きません。
分配原資の見方は賃料収入・売却益・再組成・借入の違い、事業者を見る順番は運営会社の財務チェックも参考になります。
【補足】
グループ会社とのマスターリース自体が悪いわけではありません。
重要なのは、契約賃料の根拠と支払能力が開示され、物件収益・グループ財務・出口の説明と整合しているかです。
よくある質問
マスターリースがあれば空室でも分配金は変わりませんか?
固定賃料型で、契約どおり支払いが続く間は空室の影響を受けにくくなります。
ただし、パススルー型、賃料改定、免責、契約解除、相手先の支払不能があれば分配へ影響します。
家賃保証と書いてあれば契約期間中は安心ですか?
「保証」という表現だけでは判断できません。
契約期間、賃料改定、解約、免責、保証主体を確認してください。
国土交通省も、家賃保証をうたう契約でも賃料減額や契約解除があり得ると案内しています。
グループ会社との契約は避けるべきですか?
一律に避ける必要はありません。
関連当事者取引として、実際の物件収益、契約賃料の根拠、相手先の財務、グループ全体の集中リスクを外部企業との契約より丁寧に確認します。
マスターリースがあれば元本も守られますか?
守られません。
マスターリースは主に運用中の賃料に関する契約です。
元本は物件の売却、自社買取、再組成などの出口に左右され、価格下落や売却延期の可能性があります。
まとめ|契約名ではなく、誰が何を原資に払うかを見る
ポイント
・空室リスクは消えず、相手先の信用リスクへ移る
・固定賃料・パススルー・売上連動を区別する
・6ケースごとに分配原資と出口を分けて見る
・不明点は契約書と事業者回答で確認する
マスターリースは、投資家の分配を安定させる有用な仕組みです。
一方で、契約名だけでは安全性を判断できません。
相手先、賃料算定式、減額・解除条件、最終需要、出口を順番に確認し、説明がつながる案件だけを検討することが大切です。
不動産クラファン全体の案件選びは投資判断チェックリストも参考にしてください。
出典・参考
- 国土交通省|サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン・注意事項
- 国土交通省|サブリース事業適正化法に関するQ&A
- 消費者庁・国土交通省|サブリース住宅原賃貸借契約の注意点
- 国土交通省|サブリース住宅原賃貸借標準契約書
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