【無料テンプレ付】クラファンの実質利回りを1分で計算する方法|拘束期間込みで表示利回りを検証
不動産クラウドファンディングやソーシャルレンディングの募集ページには「予定利回り◯%」や「想定利回り◯%」といった数字が並びます。
しかし、それは投資家が手にする利回りとイコールではありません。
表示される年利はあくまで運用期間中の年換算の数値であり、実際には運用前後に発生する空白期間や税金、手数料の影響により、投資家が得る実質利回りは低下します。
短期案件の場合は特に、入金〜運用開始、運用終了〜償還までのタイムラグで投資効率が落ちる可能性があります。
この記事では、表示利回りと実質利回りの差を分かりやすく解説し、実質利回りの計算方法や具体例、比較ロジック、注意点をまとめます。
この記事でわかること
・表示利回りと実質利回りの違い
・計算式と実質利回りの算出方法
・具体的な計算例
・計算テンプレートの項目と使い方
・ファンド比較ロジック
・注意喚起:時間差・税金・手数料
・まとめ
表示利回りと実質利回りの違い
ポイント
・表示利回りは運用期間を基準に計算された年利換算値
・実質利回りは運用前後の空白期間も含めた投資効率
・短期案件では年利表示より実質利回りが落ちやすい
表示利回り(想定利回りとも呼ばれます)は、ファンドの募集ページに記載される「年利◯%」という数字です。
これは運用期間中に得られる利益を年間換算したものであり、運用開始日と終了日の間に得られる利息を示します。
分配金の計算方法としては、投資金額×想定利回り×運用期間が基本であり、たとえば100万円を年利5%で1年運用すると税引き前で5万円の分配金が得られる計算になります。
しかし、この計算には運用前後の拘束期間が含まれていません。

実際には入金〜運用開始、運用終了〜償還までの無配当期間があるんだよね。
*一部の業者は本期間も配当がのります
一方、実質利回りは投資家目線で資金が拘束される全期間を基準に計算した利回りです。
入金後すぐに運用が始まるとは限らず、運用終了後に元本が償還されるまで数週間〜数ヶ月かかることも一般的です。
入金から運用開始までの期間や運用終了後から償還までの期間が空白になると投資効率が下がるタイムラグがあり、運用期間=資金拘束期間というのは思い込みです。
特に短期の案件では表示利回りと実質利回りの差は無視できません。
計算式と実質利回りの算出方法
ポイント
・表面利息の計算式:投資金額×表示年利×(運用日数÷365)
・実質年利の計算式:表示年利×(運用日数÷拘束日数)
・手取り利回りはさらに税金や手数料を差し引いて計算する
表示利回りを基にした表面利息は、運用期間中のみ発生する利息を示します。
計算式は次の通りです。
表面利息=投資金額×表示年利×(運用日数÷365)
しかし、投資家の資金は入金日から償還日まで拘束されます。
したがって、実質利回りを求めるには、運用期間日数と拘束期間日数を比較します。
実質年利は次の式で算出できます。
実質年利(%)= 表示年利(%)×(運用日数÷拘束日数)
この式は表示利回りを日数比で調整したもので、運用期間より拘束期間が長い場合は実質年利が低下します。
拘束期間には、
- 入金期日から運用開始までの準備期間
- 運用終了から償還までの決算・入出金処理期間
が含まれます。
具体的な拘束日数はファンドや事業者によって異なるため、募集要項や重要事項説明書で運用開始日・終了日、入金日、償還日を確認し、自身で計算することが重要です。
なお、分配金からは源泉徴収税や振込手数料が差し引かれるため、最終的な手取り利回りはここで求めた実質年利よりさらに低くなります。
具体的な計算例
ポイント
・運用期間89日/拘束期間113日のファンドでは表示年利8.5%が実質約6.69%に下がる(例)
・短期案件ほど運用日数と拘束日数の差が大きく実質利回りの低下が顕著。
表面利息=投資金額×表示年利×運用日数/365日
実質年利(%)= 表示年利(%)×(運用期間日数 ÷ 資金拘束期間日数)
の式を使って実際のファンドに当てはめてみます。
例:運用期間89日、拘束期間113日のファンド
仮に
・表示年利が8.5%
・運用期間が89日
・入金から償還までの拘束期間が113日
であるファンドを考えます。
表面利息は以下の通りです。表面利息=投資金額×8.5%×89/365
100万円を投資すると、89日間で約20,712円の利息を得られます(税引き前)。
ところが、資金は113日間拘束されるため、実質年利は以下のように低下します。実質年利=8.5%×89/113≈6.69%
表示では「年利8.5%」と見えても、資金拘束も含めた投資効率は6.7%程度に落ちる計算です。
税金や手数料を差し引けばさらに低くなるため、実際の手取り利回りは6%前後になります。
計算テンプレートの項目と使い方
ポイント
・テンプレートに入力する主な項目は表示利回り、運用開始日、運用終了日、入金日、償還日、投資金額
・テンプレートは運用日数や拘束日数を自動計算し、表面利息、実質年利、拘束期間トータル利回りを算出する
・入力後は自動計算された実質利回りを基準に案件を比較
エクセルやGoogleスプレッドシートで組める簡単なテンプレートを用意しておくと、複数ファンドの実質利回りを素早く比較できます。
以下の項目を入力すると、自動的に運用日数・拘束日数や利回りが計算されるよう設定します。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 表示利回り | ファンドが提示する 予定年利(%) | 基本は年利表示なので %表示のまま入力 |
| 運用開始日/終了日 | 運用の予定期間 | 募集要項の記載を そのまま入力 |
| 運用日数 | 運用開始日〜 終了日の実日数 | 自動計算 (終了日−開始日+1) |
| 入金日 | 投資家が資金を 送金する期日 | 入金期日 |
| 償還日 | 元本・配当が 返る予定日 | 事業者によって 「運用終了後◯日以内」 と記載されることが多い |
| 拘束日数 | 入金日〜償還日 までの期間 | 自動計算 (償還日−入金日+1) |
| 投資金額 | 投資する金額 | 任意の金額を入力 |
| 表面利息 | 表示利回りベース の利息 | 投資金額×表示利回り ×(運用日数÷365) |
| 実質年利 | 拘束期間ベースの 真の年利 | 表示利回り× (運用日数÷拘束日数) |
| 拘束期間 トータル利回り | 拘束期間全体 で増えた% | 表面利息÷投資金額×100 |
使い方は簡単です。
まず、募集要項や契約書から表示利回りや日付を入力します。
テンプレートが運用日数と拘束日数を自動計算し、実質年利や拘束期間トータル利回りを算出します。最後に実質年利を見て、表示利回りとの差や資金効率を確認します。
これだけで、見た目の年利に惑わされずに案件を評価できるようになります。
ファンド比較ロジック
ポイント
・同じ表示利回りでも拘束期間が長いほど実質利回りは低下する
・複数ファンドを比較するときは、表示利回り・運用期間に加え、入金日〜償還日までの拘束日数を揃えて計算することが重要
実質利回りを基準に案件を比較するには、各ファンドの拘束日数を把握することが欠かせません。
例えば、表示利回り8%のファンドでも拘束期間が95日なら実質年利は約7.36%、110日なら約6.55%、130日なら約5.48%と、拘束期間の長さによって効率が大きく変わります。
このような比較をテンプレートに入力して並べると、どの案件が資金効率が高いか一目で把握できます。
注意喚起:時間差・税金・手数料
ポイント
・運用期間の前後にあるタイムラグは実質利回りを下げる最大の要因
・税金や手数料が差し引かれる
・償還スピードが早い事業者は資金効率を高めやすい
実質利回りを考える際に最も注意すべきは、運用期間と資金拘束期間のズレです。
入金後すぐに運用が始まらない、運用終了後にすぐ償還されないというケースは珍しくありません。
また、多くのファンドでは運用終了後に会計処理や入金確認を行うため、償還までに1ヵ月程度かかることが一般的です。
このタイムラグを無視すると、年利表示だけを鵜呑みにして資金効率を大きく下げてしまう恐れがあります。

他にも入出金手数料や税金も注意だね。
さらに、分配金からは源泉徴収税が自動的に差し引かれ、手取りは表示利回りよりも低くなります。
振込手数料がかかる事業者もあるため、計算時には手取りベースでの利回りも確認しましょう。
*源泉徴収税に関しては不動産クラファンなどは雑所得区分ですので確定申告時に税額は変わります
まとめ
不動産クラウドファンディングでは、表示利回りと実質利回りの差を理解せずに投資すると、期待した利回りを得られないばかりか資金効率を大きく損なう恐れがあります。
表示利回りは運用期間だけを基準にした数字であり、運用前後の空白期間や税金、手数料を考慮した実質利回りは必ず低下します。
入金日と償還日を含めた拘束日数を基準に計算し、複数ファンドを実質利回りで比較することが、賢い投資判断には欠かせません。
特に短期案件では、入金から運用開始まで、運用終了から償還までのタイムラグが投資効率を大きく下げるため注意が必要です。
一方、運用終了後翌日に償還されるなど資金拘束期間を短縮するサービスも登場しており、実質利回りを高めたい投資家にとって魅力的な選択肢となります。



