不動産クラウドファンディングのアップサイド配当とは?利益上振れ型・期間配当型・特殊配当型を比較
不動産クラウドファンディングでは、想定していた利回りや運用期間を大きく上回る結果が出た場合、投資家に追加の配当が支払われることがあります。
これを 「アップサイド配当」 と呼びます。
最近では複数の事業者がアップサイド配当を導入し、予定利回り以上の成果を投資家に還元する仕組みが注目されています。
一方で、上振れ配当はあくまで「追加の利益が出た場合」のボーナスであり、元本や最低利回りを保証するものではありません。
この記事では、アップサイド配当の代表的な3つのタイプ
・利益上振れ型
・期間配当型
・特殊配当型
について、それぞれの仕組みやメリット・注意点、どんな案件で得になりやすいかを詳しく解説します。
この記事でわかること
・アップサイド配当とは?
・利益上振れ型(キャピタル上振れ型)
・期間配当型(全期間配当保証型)
・特殊配当型(その他)
・アップサイド配当のチェックポイント
・アップサイド配当型ファンドは出すのに少し苦労する?
・まとめ
アップサイド配当とは?

ポイント
・何らかの条件で想定利回りより大きい利回りを得れる
・利益上振れ型、期間配当型などいろいろなタイプがある
・書面等でも要確認
・必ず上振れるわけではない
アップサイド配当というのが正式な名称か不明瞭ですが、当初想定していた利回り(年利)を上振れて投資家に還元することを指します。
一言でアップサイド配当といってもその配当方針はサービスやファンドによって違います。
色々なパターンと実例を出して紹介していきます。
- 追加利益を投資家とシェアする制度:
運用で想定以上の利益が生じた場合、その一部を投資家に還元する仕組みがアップサイド配当です。
利益が想定以下の場合は追加配当がないため、通常の配当だけを受け取ることになります。 - 複数のタイプが存在
利益の増加に応じて配当額が増える「利益上振れ型」、運用期間が短縮しても予定期間分の配当を保証する「期間配当型」、その他のケースの「特殊配当型」に大別されます。
*この大別は筆者がしたものです
*一般的な公式名称ではありません - 元本や最低利回り保証ではない
アップサイド配当はあくまで「追加利益が出た場合」のボーナスであり、元本割れや利回り低下のリスクは通常の不動産クラウドファンディングと同様に存在します。 - 契約書面に記載されていることが全て
どのタイプの配当かは基本的には約款に準じます。書面等で記載もあるはずですので、確認してみましょう。

それでは各タイプの仕組みと、どのような案件で有利になりやすいかを詳しく見ていきます。
利益上振れ型(キャピタル上振れ型)

ポイント
・利益が想定を上回ったとき配当「額」が増える
・配当の掛け目やルールは事業者ごとに異なる
・利益が上振れしなければ追加配当はない
想定以上の売却益やキャッシュフローが発生した場合、その一部を投資家に分配する仕組みです。
・利益の○%を投資家にお渡しします
・余剰利益の 10% を投資家へ配当
のように上限を決めていることが多いです。
契約書や募集要項の「配当計算方法」を確認し、どこまでがアップサイドに含まれるのかを把握しておくことが重要です。
そもそもの分配金額が増えるので、想定以上に儲かることがあります。
仕組みと具体例
利益上振れ型は、追加利益が発生したときにその一定割合を投資家に還元する構造です。
代表例のCOZUCHIでは、想定を上回る利益が出た場合に投資家へ「追加配当」を支払うことを公式に掲げています。
実際のファンド文章では
『本ファンドでは、キャピタルゲイン(売却利益)の25%を上限として投資家の皆様に配当を実施する予定です。』
となっています。
*ファンドによることなる可能性があるので注意してください
*実際の利益の配当順位(優先者/劣後者)などは書面で要確認

実際に例を想像して掲載してみます。
【具体例の背景】
・1万円投資したと仮定
・年利5%+期間12ヶ月の案件
・想定以上に上振れたし早期償還になった
【結果】
元々の配当は12ヶ月後に500円となります。
*1万円✖︎年利5%=500円
↓
実際の配当は早期償還+上振れ配当によって3ヶ月後に1000円配当がでた
↓
年利換算では5%→40%
【解説】
配当「額」が500円→1000円と上振れていることです。
この後に紹介する期間配当型のアップサイド配当では、「額」が増えることはありません。
注意点とリスク
- 利益が出なければ上振れはない
配当が増えるのは利益が想定を超えたときだけであり、結果が予想通りまたは下振れした場合は追加配当はありません - 利益定義や分配順位を確認
利益には売却益から諸費用を引いた「純利益」や営業利益など複数の定義があります。
契約書でどの利益に対して何%配当されるのかを確認しておきましょう。 - 高リターンと同時にリスクも高い
一般的にキャピタルゲインを狙う案件は不動産市況などのリスクを大きく受けます。
元本割れや損失の可能性を考慮して投資判断を行う必要があります。

このケースの上振れ案件はキャピタル案件が多くなる傾向にあるね。
そのためリスクの高い案件も多いので、その点は注意だね。
期間配当型(全期間配当保証型)

ポイント
・早期償還でも当初予定分の配当が満額支払われる
*ファンドによっては〇〇日分などの制限あり
・配当額は増えないが年換算利回りが向上する
・早期償還のケースのみ上振れの可能性
運用期間が短縮されても、当初の予定期間分の配当を事業者が投資家に支払う仕組みです。
満期前に償還されても配当額が変わらないため、実質的な年利換算が上昇します。
先ほどの利益上振れ型と比較すると
『配当額は変わらないが年利が増える』
という形になります。
もちろん早期償還したケースでも必ず上振れるわけではなく、利益があった場合のみです。
仕組みと具体例
期間配当型は、早期に償還された場合でも「〇〇日間の運用期間の配当」を全額受け取れる方式です。
その中でも元々想定していた運用期間分の配当を支払う方針のことを「全期間配当保証」を指すことが多いです。
*実際の利益の配当順位(優先者/劣後者)などは書面で要確認

実際に例を想像して掲載してみます。
【具体例の背景】
・1万円投資した
・年利5%+期間12ヶ月の案件
・早期償還して運用期間1ヶ月になった
【結果】
元々の配当は12ヶ月後に500円となります。
*1万円✖︎年利5%=500円
↓
実際の配当は1ヶ月後に500円
↓
年利換算では5%→60%
【解説】
配当「額」は変わりませんが「年利」は変わっています。
前述した利益配当型とどちらの方が利益が多いかは案件によって異なりますが、上振れの性質が違う点は理解しておきましょう。
注意点とリスク
- 配当額は増えない
年利換算では高い数字になりますが、投資家が受け取る配当額自体は当初の予定と変わりません。 - 利益定義や分配順位を確認
利益には配当の順番があります。
優先出資者/劣後出資者への配当が終わった残利益から上振れ配当を捻出するのか、優先出資者から上振れ上限まで先に捻出されるのかは、契約書面などで確認しましょう。

全期間配当型の商品もあれば、〇〇日分は配当します!という商品もあるのは注意。
あと確実に配当されるわけではなくて、利益があればだね。
特殊配当型(その他)

ポイント
・書面上でネット掲載よりも上振れてるパターン
・計算期間が引き延ばされるパターン
・償還日ベースで計算されるパターン
・リセールファンドパターン
ここに関してはアップサイド配当か?と言われると頷きにくいですが、とにかく
・掲載利回りよりも高い配当があった
・運用期間よりも多く配当があった
などの少し特殊なパターンを掲載しておきます。
- 書面上でネット掲載よりも上振れてるパターン
ネット上では年利5%で募集しているが、契約書面では年利10%としており、償還時には利益がある場合は当然10%を適応。
そのため、書面を見ていない層からはアップサイド配当のように見えるが、実際は書面通りのパターン。
*このやり方を否定しているわけではないです - 計算期間が引き延ばされるパターン
運用は〇〇日で終了するが、△△日までを計算期間として含められるパターン。
計算期間が伸びるので配当額が上がります。 - 償還日ベースで計算されるパターン
運用は終了しているが償還日まで利回りをつけてくれるパターン。
これも計算期間が伸びるので配当額が上がります。 - リセールファンドパターン
一般的にキャピタル型リセールファンドでは運用期間が短くなる代わりに利回りが上がっていることが多いです。
ネット募集時でもそのように掲載されていることがほとんどですが、一部の会社では同一利回り表記での記載になります。
*大家どっとこむなど
ただし実際には『年利5%+期間12ヶ月』→『年利10%+期間6ヶ月』という状況になっていることがあります。
*6ヶ月後にリセールが出されているのでその分利回りは上がる(配当額は変わらない)

純粋なアップサイド配当ではありませんが、上記のパターンで配当額が増えるケースがたまにあります。
アップサイド配当のチェックポイント
- 契約書・募集要項を必ず確認
・どの利益に対してどの割合がアップサイドとして分配されるのか
・早期償還時にどのような計算が行われるのか
基本的には全て成立前書面で明記されています。
なかなか難しいですが、契約条項をチェックしましょう。 - 過去実績は参考情報に過ぎない
過去に上振れした案件があるからといって将来の安全や上振れを保証するものではないです。
市況やプロジェクトの内容によって結果は大きく変わりますし、アップサイド前提での投資はよくないですね。 - 物件次第
結局は物件次第です。
上振れも早期償還も物件が良ければ起こりやすいですし、そうでなければ毀損の可能性が高まります。
不動産クラファンではちょっと調べたらある程度相場観が出てくる物件もあります。
最近ではAIに投げてみても良いかもしれません。
ちょっと一手間かけて調べてみるのが良いかもしれませんね。

あの長い契約書面を全部見るのは大変ですが、一度も見たことないのと、1回見たことあるのでは違うかもしれません。
一度がっつり見てみるのも面白いかも。
アップサイド配当型ファンドは出すのに少し苦労する?
ポイント
・アップサイド配当型にするには約款が必要
・手続き等の時間がかかる
一部のサービスがアップサイド配当型の商品を出すと、
〇〇社も出してよ!!
という声が出てくることもしばしばあります。
ただ特殊配当型を除いて基本的には
『おし!わかった!次回のファンドはアップサイド配当性向つけよか!』
と簡単にできるものではありません。
約款変更という行政上の手続き等が必要になるため、数ヶ月かかることが多いらしいです。
*実務は知らないため聞いた話です
ちょっと書面変更しただけでOKではないので、それなりに手間をかける必要があるようです。

投資家視点知ったこっちゃないですが、一応この辺りも掲載しておきます。
まとめ
アップサイド配当は、不動産クラウドファンディングにおける魅力的な仕組みのひとつです。
利益上振れ型では想定より高い売却益が出た際に配当額そのものが増え、成功報酬のようなリターンを狙えます。
期間配当型では運用期間が短縮されても予定利回りの満額配当が保証され、年利換算利回りが大きく上振れします。
特殊配当型も賛否あるかもしれませんが、投資家にとって嬉しいことに違いはありません。
ただし、アップサイド配当は元本や最低利回りを保証するものではなく、追加配当があるかどうかはプロジェクトの成果次第です。
過去の実績が良好だからといって今後も必ず上振れするわけではありません。



