不動産クラウドファンディング|運営会社が破産したら?弁済順位と元本毀損(不特法1号2号)
不動産クラウドファンディングで一番気になるのは、やっぱり「運営会社が倒れたら出資金はどうなるの?」という点だと思います。
利回りが良く見えても、倒産時に回収できない構造なら元本は普通に毀損します。
本記事では「不動産特定共同事業(不特法型)」のうち、いわゆる不特法クラファン(第1号・第2号)× 匿名組合型に限定して、破産したら何が起きるか/投資家のやること/弁済順位(どこに並ぶか)を、できるだけ現実ベースで整理します。
※本記事は一般的な制度整理であり、特定案件の法的助言ではありません(最終判断は契約書面・重要事項説明書・弁護士/税理士等で確認してください)。
この記事でわかること
・前提:不特法(第1号・第2号)×匿名組合で「誰と契約しているか」
・倒産/破産/民事再生:用語の整理(何が起きるかが変わる)
・運営会社(第1号)が破産したら:時系列で起きること
・弁済順位の現実:匿名組合出資はどこに並ぶ?なぜ元本が大幅毀損しやすい?
・投資家がやること:債権届出など最低限の実務
・返金までの期間と「戻る金額」の考え方(イメージ)
・よくある質問(FAQ)
・まとめ
前提:不特法(第1号・第2号)×匿名組合は「契約当事者」が超重要
ポイント
・第1号=(基本的に)投資家と匿名組合契約を結ぶ“営業者”
・第2号=募集の取扱い(代理・媒介)をする側
・「運営会社」と一口に言っても、倒れたのが第1号か第2号かで話が変わる
不特法クラファンは、ざっくり言うと
・第1号(営業者):投資家と契約して、不動産取引からの収益を分配する主体
・第2号:第1号の契約を「募集する/取り扱う」主体
という役割分担になりがちです。
ここで大事なのは、あなたが「誰と」匿名組合契約を結んでいるか(=第1号が誰か)です。
破産の話は、基本的に契約当事者が倒れた時が一番重たい。

(任意組合型について)
任意組合型は「ファンド財産の帰属」や「倒産隔離(倒産した時に巻き込まれにくいか)」の考え方が異なります。
ただ本記事は不特法(匿名組合型)に絞るので、任意組合は“違う仕組みがある”程度の触れ方に留めます。
※本記事は「不動産特定共同事業(不特法型)」のみを対象とし、いわゆる「不特法型クラファン(第1号・第2号)」に絞って解説します。

「プラットフォーム名」じゃなくて、書面に書かれてる“営業者(第1号)”を見よう。ここが倒れると話が一気に重くなります。
倒産/破産/民事再生:用語の整理(ここで“起きること”が変わる)
ポイント
・倒産=状態(資金繰り破綻の総称)
・破産=清算(会社の財産を換価→配当)
・民事再生=再建(事業を続けながら債務を整理)
「倒産」はざっくりした言葉で、法的にはいろいろ混ざります。
不特法クラファンの文脈で重要なのは、どの手続に入ったかです。

- 破産(はさん)
会社を畳む方向の手続です。財産を換価して、法律の優先順位に従って債権者に配当します。
→ 「元本が戻るか」は残った財産次第になります。 - 民事再生(みんじさいせい)
事業を続けつつ債務を整理する手続です。再生計画が通れば、返済条件が変更される可能性があります。
→ “すぐゼロ”ではないが、条件変更・遅延の可能性があります。 - 特別清算(とくべつせいさん)
会社の清算手続の一種で、裁判所が関与します。負債の整理をしながら畳みます。
→ 破産よりソフトに見えることもありますが、最終的に回収できるかは別問題です。
運営会社(第1号)が破産したら何が起きる?(時系列で整理)
結論の雰囲気
・分配は止まる/遅れる可能性が高い
・管財人(破産管財人)が資産を集めて売却→配当の順
・投資家は「債権者」として手続に参加
第1号(営業者)が破産すると、投資家目線ではだいたい次の流れになります。

破産開始〜配当までのざっくりの流れ
- 破産手続開始決定
裁判所が「破産手続を始めます」と決めるタイミング。ここから、会社が自由にお金を動かして…みたいなのは基本できなくなります。 - 破産管財人が選任(管財事件の場合)
財産の調査・管理・換価(売却)・配当を担当する人(弁護士)が立つことが多いです。
※ケースによっては「同時廃止」などで管財人が付かず、実質配当なしで終わることもあります。 - 財産の調査・換価(不動産の売却等)
不動産を売る、回収できるものを回収する、という作業が進みます。
不動産は売れるまで時間がかかるので、ここが長期化しがちです。 - 債権届出 → 債権調査
投資家は「自分はこれだけ請求権があります」という届出(書類)を求められるのが一般的です。
認否(合ってる/違う)をされて、問題なければ確定していきます。 - 配当(あれば)
換価してお金が残り、配当原資があれば、法律の順番に従って配当が行われます。
→ 元本が満額戻るとは限りません。
正直なところ、「破産した瞬間に返ってくる」みたいな世界ではないです。
そして、ここから先で重要なのが「弁済順位」です。

「結局いくら戻る?」って話は、順番(弁済順位)と、そもそも換価してお金が残るか次第。ここを避けて語ると事故るやつです。
弁済順位の現実:匿名組合出資はどこに並ぶ?なぜ元本が大幅毀損しやすい?
この章の結論
・匿名組合の出資は、物件の持ち分ではなく、基本は営業者に対する請求権(=債権)になります。
・破産では担保権者・手続費用等が先。投資家はその後ろに並ぶことが多いです。
・さらに匿名組合は、損失が出たら出資の価額自体が減る前提の契約です。
①まず前提:匿名組合の出資金は「営業者の財産」になる
不特法型クラファンの多くは、投資家が匿名組合員としてお金を出し、営業者(第1号)が不動産を運用して収益を分配する形です。
ここで超重要なのが、匿名組合のルールです。
匿名組合員が出した出資は、営業者の財産に属するという整理になります。
つまり、投資家は「この不動産の持ち分を持っている」わけではないです(ここが誤解されがち)。

そして匿名組合員は、営業者が第三者と行った取引について、基本的に第三者に対して直接の権利義務関係に立たない形です。
なので、破産時に「じゃあこの物件を差し押さえて回収!」みたいな動きは、原則として難しいです。
②破産での「支払いの順番」:投資家は基本“後ろ側”に並ぶ
破産では、会社の財産を売って現金化し、法律が定める優先順位で支払われます。
投資家(匿名組合員)が並ぶ場所は、ざっくり言うと「一般の債権者の列」になることが多いです。

| ざっくり順位 | 区分 | 具体例 | 投資家への意味 |
|---|---|---|---|
| 最優先になりがち | 担保権者(別除権) | 抵当権付きの銀行融資など | 物件が売れても、まず担保側の返済で消えることがある |
| かなり強い | 財団債権 | 破産手続の費用、管財業務の費用など | 先に差し引かれるので、配当に回る原資が減る |
| 優先 | 優先的破産債権 | 一定の税金・社会保険料・賃金等(範囲あり) | 一般の債権者より先に支払われる |
| ここが投資家の列(多くの場合) | 一般破産債権 | 取引先への未払、匿名組合員の出資金返還請求など | 残りを“按分(割合)”で受け取る。残りが少なければ回収率は低い |
| 最後の方 | 劣後(契約/法律上) | 約定劣後、遅延損害金の一部など | ここまで残るケースは多くない |
| 一番最後 | 株主 | 残余財産 | 基本的に残らない前提で考える |
ここで言いたいのは、匿名組合の出資者は「優先債権者」ではないということです。
担保が刺さっている・借入が厚い・手続費用が嵩むと、投資家の列に回ってくる原資は簡単に薄くなります。
③さらに致命的:匿名組合は「損失が出たら出資の価額が減る」
匿名組合は、株に近い“リスク資本”っぽい面があります。
契約が終了したとき、営業者は匿名組合員に出資の価額を返還しますが、損失で出資が減っているなら“残額”だけ返せば足りるという整理です。
つまり、破産以前に
・物件価格が下がった
・賃料が落ちた
・コストが増えた
などで損失が出ていれば、「出資の価額」自体が目減りします。
そして破産時は、そこからさらに弁済順位の話が乗ってくるので、結果として元本が大幅毀損しやすい、という結論に寄りがちです。
④イメージ例:物件が売れても「借入返済で消える」パターン
超ざっくりの例ですが、こんな感じが起き得ます(数字は説明のための仮置きです)。

| 項目 | 金額(例) | コメント |
|---|---|---|
| 物件の売却代金 | 1億円 | ここから全員に配られるわけではない |
| 売却諸費用・手続費用(概念) | ▲500万円 | 税金・仲介・管財費用等で目減り |
| 担保付き借入の返済 | ▲7,000万円 | まずここで消える(担保側が強い) |
| 残り(配当に回り得る原資) | 2,500万円 | ここから一般債権者で按分 |
| 匿名組合の出資総額(投資家) | 5,000万円 | この例だと満額は到底無理 |
| 投資家の回収率(単純化) | 最大でも約50%程度 | しかも一般債権者が他にいればさらに薄まる |
もちろん、借入が無い案件や、物件価値が十分に残る案件だと回収率は上がり得ます。
ただ、破産する時点で会社全体が厳しいことが多いので、現実論としては「回収率は低くなりやすい」と考えておくのが安全です。
あと地味に大事なのが、不特法の“分別管理”は信託の分別管理と同じではないという点です。
帳簿や口座で分けていても、法的に「完全に倒産隔離される」わけではない(=営業者名義で登記される)ので、倒産時の安心材料として過信は禁物です。

「優先劣後があるから安心」は、平常時のクッションとしては分かる。
でも倒産時は“そもそも投資家の列に回ってくる原資があるか”の勝負になりがちかと。
投資家がやること:債権届出など“最低限これだけ”
ポイント
・破産時は投資家は「債権者」になるので、債権届出の期限を落とすと詰む可能性
・まずは証拠(書面/画面/入金/分配明細)を固める
・偽連絡(口座変更詐欺など)に注意
倒産は突然来ることもあります。
有事に慌てないために、投資家目線での“最低限”をまとめます。

- 証拠保全(まずこれ)
・契約成立前書面(重要事項説明)
・契約成立時書面(匿名組合契約書)
・出資の入金履歴(振込明細/口座履歴)
・分配明細(あれば)
・案件ページのスクショ(募集条件、借入有無、担保、出口の説明など)
→ 後から消えたり見れなくなることがあるので、今のうちに固めるのが良いです。 - 管財人/裁判所からの案内を確認
破産開始後は、破産管財人や裁判所から書類が届くことがあります(届出期限や提出先が書いてある)。
メールだけでなく郵送も含めて、見落とさないように。 - 債権届出(期限厳守)
配当を受けるには、原則として債権届出が必要になります。
届出書の書き方・必要資料は事件ごとに異なるので、案内に従って出します。
※届出期限を過ぎると、配当を受けられない/不利になる可能性があるので本当に注意。 - 債権調査(否認されたら対応)
届出した債権が「認められない」「金額が違う」とされた場合、手続の中で争点になることがあります。
ここは案件によっては弁護士相談が現実的です。 - 二次被害防止(偽連絡に注意)
倒産局面は詐欺が増えます。
「口座を変えてください」系は一旦疑う。連絡先は必ず公式の公告・裁判所/管財人情報から確認しましょう。
やること自体は地味です。
でも、地味な手続きを落とすと回収の権利ごと落ちるので、ここが一番大事かもしれません。
返金(配当)までの期間と「戻る金額」の考え方
ポイント
・不動産が絡むので、数か月〜年単位で見た方がいい
・戻る金額は、物件の売却価格 −(借入/担保返済+費用)− 他の債権者への配当で決まる
・0円(配当なし)も普通にあり得る
「いつ返ってくる?」は、正直ケース次第です。
不動産が絡む以上、すぐ換金できないことも多いし、売却前提ならなおさら時間がかかります。

期間が伸びやすい要因
- 不動産売却に時間がかかる(買い手が見つからない・条件が合わない)
- 権利関係が複雑(担保、差押え、共有、訴訟)
- 運営会社が複数案件を抱えている(全体の整理に時間がかかる)
- 換価しても配当原資が残らない(同時廃止/配当なし等)
「戻る金額」については、結局のところ
①物件がいくらで売れるか
②借入(担保)がどれだけあるか
③手続費用・税金などでどれだけ引かれるか
④他の債権者がどれだけいるか
この4つに戻ってくるかと。

ここが分かると、「優先劣後のクッション」より先に、そもそも配当原資が残るのか?という現実が見えてきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 破産したら、元本は何%くらい戻りますか?
A. 案件と会社の状況次第で、0%〜。それなりに戻るまで幅があります。
ただ、破産は「資産より負債が大きい」局面で起きやすいので、現実としては大幅毀損(最悪0円)も普通に想定しておいた方が安全です。
判断軸は、物件の売却価格と借入・担保の厚み、そして費用と他債権者です。
Q. 「分別管理」って書いてあるから、倒産しても大丈夫では?
A. 分別管理=倒産隔離ではありません。
帳簿・口座で分けて管理する仕組みはありますが、匿名組合型では対象不動産は営業者名義で登記されるのが通常で、信託のように「登記で隔離」できるわけではない、という整理になります。
なので、“安心材料の一つ”くらいの温度感で見るのがおすすめです。
Q. 第2号(募集側)が倒産したらどうなりますか?
A. まず確認すべきは、あなたの契約当事者(第1号)が誰かです。
第2号が倒れても第1号が生きていれば、理屈上は契約が直ちに消えるわけではありません。
ただし実務では、連絡・レポート・入出金の導線が止まって混乱する可能性はあります。
この場合も結局、公式の案内(裁判所・管財人・第1号の公告等)を起点に動くのが安全です。
まとめ:倒産リスクの本質は「弁済順位」と「資産が残るか」
不特法型(匿名組合型)の不動産クラウドファンディングで、運営会社(第1号)が破産した場合、投資家は基本的に債権者として手続に参加することになります。
そして重要なのは、匿名組合の出資は物件の持ち分ではなく、営業者に対する請求権(債権)になりやすいという点です。
破産では担保権者・手続費用等が先で、投資家はその後ろに並ぶことが多いので、元本が大幅毀損する可能性は高いと考えておいた方が安全です。
有事に投資家ができることは多くはないですが、少なくとも
・証拠保全
・債権届出(期限厳守)
・偽連絡への警戒
この3点は、地味だけど効きます。
「いざという時にどうなるか」を理解した上で、納得できる範囲の金額・分散で投資するのが、結局いちばん現実的かと思います。



